夜行高速乗合バスの解説 | エクスプレス関東アーカイブスEXPRESS KANTO ARCHIVES | ||||||||||||
深夜の長距離運用を終えて早朝の丸山営業所に集う、現代の高速車両群。
(左から)11,1(Dream Sleeper),12 丸山営業所 2022.8.12 (Photo:Ajiwai) ■バブル期に急速に路線網を充実。関東バスが運行する夜行高速乗合バスは、 1988(昭和63)年8月6日より運行開始した新宿~奈良間の夜行高速バス「やまと号」から始まる。鉄道による寝台特急や夜行列車が衰退していくなか、 格安で目的地までピンポイントで到達できる夜行高速バスの需要は増大傾向にあり、 日本全国では急速に路線網が充実していったが、 その頃関東バスにおいても急速に夜行高速バスへの事業展開が本格的となっていった。 新宿~奈良間の「やまと号」運行開始翌年である1989(平成元)年6月1日からは 「やまと号」新宿~近鉄高田間が追加で開業、 1989(平成元)年12月20日より新宿~枚方車庫「東京ミッドナイトエクスプレス京都号」、 1990(平成2)年3月22日から青梅街道営業所・新宿~津山・岡山・倉敷「マスカット号」が運行開始、 というように続々と運行路線を拡大していった。 使用される車両は「やまと号」運行開始に合わせて、 ボディカラーを白ベースにカラフルな円弧をあしらった現行塗色に改め、 車体表記も専用の「EXPRESS YAMATO」と表記した日野ブルーリボン「P-RU638BB」が投入された。 その後は運行路線拡充に伴い「EXPRESS YAMATO」から汎用性のある「EXPRESS KANTO」に改められたが、 30年以上が経過した今でも古さを感じさせない斬新かつ安心感のあるデザインは、 運行開始から現在まで引き継がれている。
ちなみに貸切仕様車についても、 1990(平成2)年式の5481~5485日野セレガFD「U-RU2FTBB」からは、 従来の白色に黒と茶色をあしらった旧塗色から現行塗色の「EXPRESS KANTO」で登場した。 翌1991(平成3)年に登場した5760,5761,5770,5771三菱エアロクイーンK「U-MS729S」が最後の旧塗装となって以後は、 大型貸切車両については全て現行塗色となっている。 車両面で特筆されるのは「やまと号」用として2000(平成12)年,2005(平成17)年に登場した2階建ての三菱エアロキング 120,144「KC-MU612TA」,150「MU612TX」の3台であろう。 2階建ての巨大ボディで夜行高速バスの基幹路線を担当し、 圧倒的な存在感を示していた。 しかし最初に投入された120,144は使用可能最終日が迫る状況となった。 エアロキングは2013(平成25)年2月28日の到着分をもって「やまと号」から撤退しており、 それに先立ち144は2月25日に除籍された。 ポスト新長期規制による排出ガス規制強化により三菱エアロキングが2010(平成22)年で生産終了となったが、 同じ2階建てバスによる代替ができなくなり、 144は代替の新車が登場することなく姿を消した。 同時期に投入された120については延命試験・対策工事を実施のうえ現在でも現役続行であるが、 120は2020(令和2)年に武蔵野営業所へ転属、 ゴールデンウィークや夏休み期間に増発運行されるお台場直行バス: 湾01「武蔵野営業所・吉祥寺駅~有明ガーデン」に期間限定の目玉で登場する以外は目立った活躍の場がなくなっている。 150は2022(令和4)年8月現在は丸山営業所に残存しているが、 定期運用を持たず今後が不透明な状況のため、 動向に注意が必要だ。 近年の動きとしては、 2019(平成31)年4月1日より羽後交通と関東バスによる共同運行でエクスプレス鳥海号「東京駅~本荘営業所」の運行を開始したことが挙げられる。 元は秋田県を本拠とする羽後交通と、ジェイアールバス東北により共同運行されていたドリーム鳥海号「東京駅~本荘営業所」だったが、 2018(平成30)年10月1日からジェイアールバス東北が同路線から撤退、 羽後交通による単独運行となっていたところに関東バスが参入したものである。 関東バスが運行に加わったことに併せて名称がエクスプレス鳥海号へ改称された。 東京側と秋田側の運行事業者による合理的な路線運営を実施、 2020(令和2)年4月1日からは発着停留所に新宿駅西口※宿02「新宿駅西口~丸山営業所」が主に発着する14番停留所 を加えるなど、 利便性を向上させる施策が行われた。 このほか2021(令和3)年9月13日には 2階建てバスであるバンホール/スカニアのアストロメガ「TDX24」が2台導入され、 12月2日よりやまと号「新宿京王プラザホテル,バスタ新宿~五條バスセンター」にて運用が開始された。 ■新型コロナ蔓延により試練の夜行高速バス。2020(令和2)年から広がった新型コロナウイルス蔓延に伴う行動制限のあおりを受けて、 同年の4月入ると各路線では次々と運行休止に追い込まれた。2022(令和4)年に入ると、 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置等による行動制限が解除されたことに伴い徐々に運行が再開されたが、 新型コロナ蔓延前の水準に戻ることはできず、 まだ運行が再開できていない路線や週末のみ運行の路線が多く見られる。 ドリームスリーパー東京大阪号「池袋駅西口・新宿駅西口~南海なんば高速BT・大阪駅前」から共同運行先の両備バスが撤退し、 関東バスによる単独運行となったが、 両備バス所属のドリームスリーパー車両が関東バスへ移籍し関東バス2号車として7月15日より運行を開始した。 また、8月10,12,14日(東京発基準)の3往復限定でアストロメガ2階建てバスによるエクスプレス鳥海号への特別運行が行われるといった話題もあり、 試練を迎えた夜行高速バスの一日も早い復活が望まれる。 →夜行高速バスの車両配置表(現役車両編) →夜行高速バスの車両配置表(除籍車両編) 夜行高速バスの運行について (2010.11.16改正,2022.8.10現在) 「やまと号」 新宿~奈良,1号車 ※奈良線 (高速01[本系統]) (高速01-1[中央自動車道迂回系統]) ※1988(昭和63)年8月6日運行開始,奈良交通と共同運行 新宿~五條BC,11号車 ※五條線 (高速02[本系統]) (高速02-1[中央自動車道迂回系統]) (高速02-2[新宿京王プラザホテル~忍海BC:途中中断系統]) (高速02-3[新宿京王プラザホテル~忍海BC:中央自動車道迂回,途中中断系統]) ※1989(平成元)年6月1日新宿~近鉄高田間で運行開始 ※1991(平成3)年3月25日五條バスセンターまで延長 ※2016(平成28)年4月4日出発場所が新宿高速バスターミナルからバスタ新宿へ変更
「ルミナス・マスカット号」 (新宿~津山・岡山・倉敷) ※倉敷線 (高速03[本系統(新名神)]) (高速03-1[中央・名神迂回系統]) (高速03-2[東名・名神迂回系統]) ※1990(平成2)年3月22日青梅街道営業所・新宿~津山・岡山・倉敷間で運行開始, ※中鉄バスと共同運行→2008(平成20)年3月20日より両備ホールディングスへ変更 ※2016(平成28)年4月4日出発/到着場所が新宿高速バスターミナルからバスタ新宿へ変更 ※2021(令和3)年11月18日~「マスカット号」→「ルミナス・マスカット号」へ再編, 関東バス・小田急シティバス(現小田急ハイウェイバス)・両備ホールディングス・下津井電鉄の共同運行化 ※上記再編に伴い丸山営業所,中野駅,岡山インター,倉敷インターを廃止、津高に新規停車
「東京ミッドナイトエクスプレス京都号」 (新宿・渋谷~山科・京都・樟葉・枚方) ※京都線 (高速04[本系統(新名神)]) (高速04-1[中央自動車道迂回系統]) (高速04-2[東名・名神迂回系統]) ※1989(平成元)年12月20日新宿~枚方車庫間で運行開始,京阪バスと共同運行 ※2016(平成28)年4月4日出発場所が新宿高速バスターミナルからバスタ新宿へ変更
「新宿・豊橋エクスプレス ほの国号」 (練馬・中野・新宿→豊川・豊橋・三河田原) (三河田原・豊橋・豊川→渋谷・新宿・中野・練馬) ※豊橋線 (高速06[本系統]) (高速06-1[中央自動車道迂回系統]) (高速06-2[練馬駅北口~植田車庫前:途中中断系統]) (高速06-3[中野駅~田原駅前:途中中断系統]) ※2006(平成18)年8月1日青梅街道営業所・新宿~津山・岡山・倉敷間で運行開始, ケイビーバス・豊橋鉄道の共同運行 →現在は関東バス・豊鉄バスの共同運行 ※2016(平成28)年4月4日出発/到着場所が新宿高速バスターミナルからバスタ新宿へ変更
「エクスプレス鳥海号」 (新宿・東京→象潟・本荘) ※2019(平成31)年4月1日~関東バス参入, 羽後交通・関東バスの共同運行 ※2020(令和2)年4月1日~発着停留所に新宿駅西口(14番)追加
廃止となった昼行高速バス路線 「日光・鬼怒川線」 (新宿西口~日光東照宮・鬼怒川温泉駅) ※1995(平成7)年3月18日運行開始,東武バスと共同運行 ※1997(平成9)年3月24日限りで日光線廃止 ※1998(平成10)年2月27日限りで鬼怒川線廃止 | ||||||||||||
運用を終えて早朝の丸山営業所に集う高速車両群は、今も昔も変わらない。 150(奥),96(手前) 丸山営業所 2011.1.8 (画像提供:練馬急行様) | ||||||||||||
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